映画「SMILE スマイル」ネタバレあらすじ考察。あの笑顔が示すものとは?

2023年10月14日

映画「SMILE スマイル」がどんな内容なのかを紹介します。結末までのネタバレを含むのでご注意ください。

また、記事の後半では、本作に「閲覧注意シーン(例:グロ、虫、精神的恐怖)」があるかどうかについて言及しています。そういった描写が苦手な方のお役に立てると思いますので是非この記事を最後までご覧ください。

登場人物

ローズ・・・本作の主人公。精神科医の女性。
ホリー・・・ローズの姉。あることをきっかけにローズと仲たがいする。
ローラ・・・ローズの目の前で自殺する大学院生の女性。
ムニョス・・・ローラの目の前で自殺した大学教授の男性。
ジョエル・・・ローズの元恋人で刑事の男性。
ロバート・・・人を殺し服役中の男性。一連の事件の唯一の生き残りとしてローズに頼られる。

簡単な話の流れ

1.ある女性の自殺を目撃した主人公が笑顔を浮かべる霊の姿を見るなどの現象に遭遇する。
2."何か"が連鎖的に人々を自殺させていると知った主人公は自分も自殺する運命だと気づく。
3.主人公は"何か"に打ち勝つため実家にこもるが精神を乗っ取られ元恋人の前で自殺してしまう。

あらすじ

自殺の目撃者となるローズ

ある病院の精神科医師ローズは、精神疾患を抱える患者たちの診察に追われ多忙な日々を送っていた。そんなある日、ローズのいる病院に大学院生のローラという女性が入院することになった。ローラにそれまで精神疾患はなかったがある出来事をきっかけにおかしくなっていったという。その出来事とは、ローラの目の前でムニョスという大学教授がハンマーで自らを殴りつけ自殺したというものだった。

ローズがローラと面会した際彼女はひどくおびえた様子だった。ローラは必死にローズにこう訴えかけた。「不気味な笑みを浮かべる人間の姿をした何かを見るようになった」と。その何かはローラの知り合いだったり、見ず知らずの赤の他人の姿で彼女に微笑みかけるのだという。ローズは頭が作り出した幻覚を見ていると諭すが、ローラはさらにヒートアップしていく。そのうち、何もいない場所を指さしながら「そこにいる!」と叫び始めた。そして、彼女は不気味な笑みを浮かべながら花瓶の破片で首を切り裂き自ら命を絶ってしまう。

ローラの死を目撃したローズはその後、幻聴や幻覚に悩まされるようになってしまう。

そんなある日、ローズは姉ホリーの息子の誕生日会に招待される。ローズは事前におもちゃ屋で買ったプレゼントを持って、ホリーとその家族が住む家を訪れた。ホリーの息子がローズからもらったプレゼントを開封すると、なんとそこには猫の死骸が入っていた。それは少し前に行方不明になったローズの飼い猫だった。プレゼントを開封した本人はもちろん誕生会の参加者たちも恐れおののきその場は騒然となる。ローズ自身もプレゼントの中に猫を入れた覚えはなくひどく取り乱した。さらにそんなローズを追い詰めるかのように彼女に向かって微笑む女性が現れた。そのことを周りに訴えるローズだったが、その女性のことは誰にも見えていない様子であった。ローズは自分の身に起こる出来事を誰にも理解されないことに絶望と孤独を深めていった。

連鎖する自殺

ローズは、ローラが亡くなる前に話していたことが自分の身にも起きていることに確信を持ち始めた。そして、それを解決するためローラの目の前で自ら命を絶ったムニョス教授の妻にコンタクトを取り会いに行った。教授もまた笑顔の何かに心を蝕まれていき、やがて自殺を選んだことが明らかになった。さらに詳しく話を聞こうとしたローズだったが、途中で教授の妻に追い返されてしまい解決の糸口はつかめぬままだった。

続いて、ローズは元恋人で刑事のジョエルのもとを訪れた。ジョエルに警察のデータベースにアクセスしてもらった結果、ムニョスは自殺する数日前に女性の自殺を目撃していたことが判明する。そして、その女性も同様にある男性の自殺を目撃していた。

ローズはこう考えた。超常的な“それ”がある人間に取りつき別の誰かの前で自殺させる。すると、今度は自殺を目撃したその人に“それ”が取りつき、また別の誰かの前で自殺させる。その自殺の連鎖が巡り巡って、いま、“それ”はローラの自殺を目撃したローズに取りつき、自殺に追い込むために彼女を苦しめている。

このことを姉のホリーに熱心に説明するローズだったが、ホリーは気味悪がって一切話を聞いてくれなかった。

本件をさらに調べていたジョエルからローズのもとに連絡が入る。“それ”が引き起こしたと思われる事件が20件ありそのうち19人が自殺していたというのだ。つまり、一人だけ生き残った人物がいたのだ。そのひとりは会計士のロバートという男性。彼のみ、同僚の自殺を目撃し“それ”に取りつかれながらも自殺を免れていた。ロバートは同僚の自殺を目撃した後、見知らぬ女性を殺していた。この殺人を目撃した人間が一人おり、その人物はのちに自殺している。

ローズは自分の運命を変えるため、ロバートが収監されている刑務所を訪れた。ロバートによると“それ”の呪いを解く方法はこうだった。誰かをできるだけ残忍な方法で殺すこと。そして、その殺人を誰かに目撃させ、トラウマを植え付けること。そうすれば、“それ”はその目撃者に乗り移り、自分は自殺せずに済むのだという。

ローズは人を殺すことなどできず万策尽きた思いだった。そんな彼女が自宅にいたところ、かかりつけのセラピストであるマデリンが訪ねてくる。自分の身に起こる出来事を精神の病だと決めつけるマデリンにローズは厳しい言葉を投げかける。そんななか、ローズのもとにある人物から電話がかかってくる。電話をかけてきたのはなんとマデリンだった。ローズの目の前にいるマデリンは“それ”が化けた偽物だったのだ。偽物のマデリンは不敵な笑みを浮かべ、逃げるローズに向かってくる。

こうしてさらに精神を蝕まれたローズは患者の一人を殺すため自分の勤めている病院にやってきた。しかし、車に隠し持っていた包丁が上司に見つかってしまいその場から逃げ出した。

トラウマとの対峙

ローズはそのままある場所に向かった。それは自分が幼少期を過ごした実家で、そこは現在は空き家になっていた。“それ”が生き残るためには次の被害者が必要であり、自分がひとりでいれば“それ”は消滅するとローズは考えたのだった。

その実家はローズにとって嫌な思い出がある場所だった。ローズが10歳とき母親が薬物の過剰摂取で動けなくなり、ローズに助けを求めた。しかし、母の異様な姿に怖気づいたローズは何もできず、結果的に母が亡くなってしまう。ローズはこの出来事がトラウマとなり、現在までその苦しみと戦い続けてきたのだった。

実家のなかを見て回っていたローズは、生前の母親に化けた“それ”と遭遇する。ローズはトラウマをはねのけるように“それ”に反撃を加え、家から飛び出した。

“それ”に打ち勝ったローズは、唯一のよりどころであるジョエルのもとを訪れ、泊まらせてくれるように頼んだ。ローズの頼みを了承したジョエルだったが、彼はいきなり例の不気味な笑顔を浮かべた。ローズがジョエルの家から飛び出るとそこは彼女の実家の庭だった。ローズはジョエルの家を訪れる幻を見ていたのだった。

そんな彼女が呆然と立ち尽くしているとそこに本物のジョエルがやってくる。ジョエルが次の被害者になることを恐れたローズは実家に入り鍵を閉めた。すると家の中にいた“それ”が再びローズに襲い掛かり、彼女は精神を完全に乗っ取られてしまう。

ドアを蹴破って中に入ったジョエルが見たのは液体燃料を頭からかぶり不敵に笑うローズの姿だった。ローズはマッチに火をつけジョエルの前で焼身自殺を図った。ジョエルはローズが燃える姿をはっきりとその目で見てしまう。

補足

閲覧注意なシーンはある?

さて、ここでは観るのがキツイ閲覧注意なシーンを解説します。ショッキングな描写が苦手な方は鑑賞の参考にしてみてください。

まず、グロイという意味での閲覧注意シーンをあげます。

「自らの顔を剥ぐ男性or化け物」
顔の皮膚を剥ぎその下の肉が生々しくウッとなります。

「首がもげかける女性」
車の中にいた主人公のもとにその姉が近づいてきてその首がいきなりだらーんと垂れ下がる場面(主人公の観た幻覚)があります。

「顔がひどく損傷した男性の遺体」
一瞬だけですが口のあたりがえぐれて舌がべろーんとなった男性の顔のドアップが映ります。前触れなくいきなりこのカットが挟まれるのでギョッとしてしまいます。

「猫の死骸」
主人公が甥にプレゼントをあげたら、その中にいつの間にか飼い猫の死骸が入っていたという場面です。見た目はグロくはありませんが、動物の死骸が苦手な方は要注意です。ちなみにここの場面は猫の死骸というより主人公がその場にいた人々からドン引きされる不憫さが個人的にはキツかったです。

つづいては、ゾッとする心霊描写を紹介します。

「不気味な笑顔を浮かべる幽霊たち」
本作のキーポイントでもある、笑顔で現れる幽霊たちが非常に怖いです。

「多種多様なジャンプスケアの数々」
大きな効果音とともに急にカメラ前に幽霊などを登場させ観客をビビらせるジャンプスケアが多用されており、かなりビビらされました。なかでも暗闇にたたずむ幽霊を映しておいて、その次のカットで車が突っ込んでくるカットを挟むジャンプスケアはなかなか新鮮でした。幽霊でビビらせるんじゃなくて車かい!という…。

なぜあの笑顔なのか?

ここではあの印象的な笑顔についての考察をしていきます。とその前に、ローズをはじめとする精神疾患を抱える人々が体験した超常現象は本人たちがそれぞれ見ていた幻覚だったという前提で進めていきます。

さて、自殺者が死ぬ前に相手に対してみせる不気味な笑顔…。本作があの笑顔を通して描きたかったものは何なのでしょうか?僕が思うにあの笑顔は精神を病んだ者が社会からイカれた奴としてのけ者にされないように「自分は正常です」とアピールするための偽りの表情をモチーフとしています。

そのヒントとなるシーンがあります。超常現象に悩まされ始めた主人公のローズが甥の誕生日会の前に、鏡に向かって笑顔の練習をするシーンです。あれはローズが自分の身に起こることを信じてもらえない中で、それ以上他者から変に思われないよう笑顔でいる練習をしています。内に秘める感情とは正反対の無理やりなその表情はどこか不気味でまさに例の笑顔そのものです。

本作は自殺者が死の直前に見せるあの不気味な笑顔を通じて、精神を病んだ者を無理やり笑顔にさせてしまう社会の冷たさを描いているのです。

作品情報

2022年製作/115分/アメリカ
原題:Smile

ホラー映画

Posted by horrordarake